『Adobe Illustrator 4.0J上級編』Adobe公式のマニュアルが意外にも(?)わかりやすい

Adobeが作っていた入門書

1990年代、adobeの製品のパッケージにはインストール用のフロッピーやCDと一緒に、マニュアルが入っていました。
アプリケーションソフトの使い方を説明した本です。

その後、本からPDF、オンラインでの説明に代わっていき今にいたります。

1990年代にも、Illustrator、Photoshop、PageMakerなどのDTPソフトの入門書はたくさん売られていました。
なんとなくですが、Adobeの作った同梱のマニュアルよりも、書店で売っている本のほうが良さそうな気がして、そっちのほうを何冊か買った記憶があります。

ところが、普通はあまりやらないような特殊な作業をしようとすると、同梱のマニュアルが役立つことにある時気づきました。
そして、造本や文字組みも含めて、よく出来た本であることも発見しました。
それ以来、自分が使ったことのない世代のものも含めて、何冊かこういったマニュアルを入手してみました。
この本も、そうやってヤフオクで落札した一冊です。

この『Adobe Illustrator 4.0J上級編』は1993年のもののようです。

簡潔に基本が語られている

Illustratorの使い方を調べようとしたら、今はネットで簡単に情報が入手できます。
基礎から、超絶テクニックまで、ありとあらゆるレベルがあるといってよいでしょう。

でも、そういうことを紹介しているサイトにいくと、広告がたくさん入っているのが普通。

検索しても、たくさんページが出てきて、どこが一番よいのかわからない。
検索結果から、どれを選ぶかがカギのようなところもあります。情報過多ということなんでしょう。
それが常識になった現在から見ると、このマニュアルの説明のシンプルさに驚きます。

なんだか親切でわかりやすい

このマニュアル自体は、上級編なので、Illustratorの基本を触ったことのある人でないと、もちろん難しいです。
でも、このマニュアルに漂う雰囲気は感じていただけると思います。

なぜわかりやすいのか?

この雰囲気と全く逆なのは、Adobe、Mac、Microsoftなどどれも同じですが、ユーザーのフォーラムでの説明です。

よく知っている人が、知らない人へのアドバイスをする。
でもよく知っている人は、知らない人がどうわからないかを理解していない。
そのため、こういうページで前例を調べても何やらさっぱりわからない。
もしくはものすごい労力をかけて読み解いていくしかない。
そういうことが多いです。

逆に、この時代のAdobeのマニュアルを見て思うに、おそらくアプリの開発者のすぐ近くに、本当に初心者のユーザーがいたのでしょう。
あの人に説明するには、こうやって伝えないと無理だな、、、等々と考えてこのマニュアルは作られたのだろうと思います。

わからない人がどこでつまづいているか? それを理解することが、わかりやすい説明には必要なのです。

編集者の役割

ある本の著者がいて、原稿を書く。その時に最初の読者となるのは編集者です。

そして、 編集者は著者よりも初心者に近い。そのことは重要です。

編集者は、著者が書いた原稿の中の、わかりにくいことや、説明の追加が必要な部分に気づかないといけません。
簡単そうな気もしますがこれがなかなか難しいのです。
実際は、何かが足りないのはわかるけれど、何が足りないのかわからないということが多いのです。

何を追加して、どこを変更して、どういうものにしていくべきか? それを考えて、著者に伝えていく。

これは編集者の非常に大切な役割です。

わかりやすい説明をページに構成するには、そういう作業が必要なのです。

hosokawakobo
細川生朗 Hosokawa Seiro
1967年生まれ。1991年に情報センター出版局に入社。『水原勇気0勝3敗11S』『いちど尾行をしてみたかった』『笑う出産』などのヒット作を編集。1994年に『きょうからの無職生活マニュアル』、1998年に『旅の指さし会話帳①タイ』を企画・編集。いずれも累計100万部以上のシリーズとなる。2001年に情報センター出版局を退職。その後、フリーの編集者として、実用書を中心にした単行本の企画・編集、自費出版の写真集や記録集の編集、社史の編纂などを手がけつつ、指さし会話帳シリーズの編集も続けている。