編集者の仕事とは?原稿執筆のサポートや“ゲラ”作業など、本や冊子を作る場合でご紹介します

本や冊子は、作家さんが書き、印刷所が印刷して出来上がる。
普通の方はそう考えると思います。

でも、出来上がるまでには、イラストレーターさん、デザイナーさん等々いろんな方が関わります。
その方たちをコーディネートするのが編集者の仕事です。

外からは見えづらく、本が完成した際にも編集者が表に出ることはありません。
編集者の仕事はどんなものなのか、本や冊子を例にしてご紹介いたします。

(簡単にまとまるはずが、長文になってしまいました!)

1)企画を立てる

本が出来上がる大本をたどると、一つの種のような「あ、これ面白いかも」というきっかけがあります。
それを元に企画書をまとめていきます。
出版社の場合は、企画書を社内で検討してGoサインが出れば刊行に向けて動き始めます。

作家さんから「こんな本を出そうよ」と持ちかけられて始まることも多いです。

2)プランニング

一冊の本は大きさやページ数、写真やイラストの扱い、文章の構成などのプランで大きく違うものになります。
たとえば“雲の撮影”をテーマにして本を作る場合に、次のような検討が必要です。

<大きさの検討>
a・文庫本サイズにして持ち運びしやすくする
b・写真が見やすいように大きなB5サイズにする

<構成上の検討>
c・季節や雲の発生する状況から掲載順を考える
d・撮影したときの美しさ、映えることを基準に順番を考える

大きさや構成は、どんな読者に、どう読まれるかを考えながらまとめていきます。
読者を想定し、類書も調べて考えていくことが重要です。

3)キャスティング

文章、写真、イラスト、デザイン等を誰に頼むかを検討する作業です。

“雲の撮影”の本を作るならば、お手本となる雲の写真が必要なはずです。
雲の研究をしている専門家に依頼すればいろいろな写真を持っているかもしれません。

あるいは、インスタグラム等で探せば、よい写真をたくさん公開している人が見つかるかもしれません。
一方で、インスタグラマーの写真を使うならば、雲の解説をしてくれる専門家にも協力を頼みたいところです。

雲の発生や撮影の方法を説明するためのイラストもあるとよさそうです。
写真が多い本になるならば、そのレイアウトが得意なデザイナーがよいはずです。

こういった要件を考えながら、誰に頼むかを考えていきます。

イラストレーターやデザイナーも、それぞれ得意とする分野があります。
その本に適した方を考えてお願いしていくのがキャスティングです。

4)執筆の依頼

“雲の撮影”の本のキャスティングの段階で、美しい写真をたくさん持っている研究者A先生が見つかり、執筆を依頼することになった、、、という仮定で話をすすめましょう。

A先生は、授業やご自身の研究で多忙かもしれません。
一冊の本をまとめてもらうためには、時間も手間もかかります。
A先生にとってもメリットのある仕事にならなければ、執筆を引き受けてはくれないでしょう。

そういったことも考えつつ、連絡をし、執筆を引き受けてもらう。
これも編集者の重要な仕事の一つです。

5)原稿の依頼

執筆をA先生が引き受けてくれることになった場合には、原稿をどう書いてもらうかの相談が必要です。

雲のことをどう書くかが課題となりますが、今回の本の場合には、雲の特徴と同時に、撮影に関する話を中心にしてもらうことが重要です。

「秋のこんな天気の日にこの雲は出てくることがある。夕方にこんな場所で撮るとよい。私はXX県の海辺で撮影した。」

こんな内容の文章を書いてもらうと、読者にとって参考になりますし「私も撮ってみたい!」と思う人も多いでしょう。

文字数や、掲載する順番なども改めて執筆者と相談して調整し、その上で原稿を書きはじめてもらうことになります。

一般的な会報、社内報、文集などの原稿依頼については、下記の記事を参考にしてみてください。

6)原稿執筆の伴走

A先生のモチベーションの高さや他の仕事の忙しさにもよりますが、「執筆をお願いします」とお伝えして、それで原稿をバリバリ書いてくれる、ということはあまりありません。

原稿の内容に自信をなくしたり、調べないといけない雲にさしかかったところで他の仕事が忙しくなってしまったり、、、いろいろな要因で執筆はストップします。

こういう時には、これまでの原稿の内容について、ポジティブな評価をお伝えして前向きになってもらったり、次に書こうと思っている内容を聞かせてもらったり、一緒に写真を見ながら思い出話をうかがったりすることが重要です。
原稿を書き終えるまでのサポートです。

時には、約束の原稿をもらうために、半分無理矢理にファミレスでの打合せを設定して、2時間待つ、みたいなこともあります。

7)改稿の依頼

書き上げていただいた原稿を、さらによいものにするために必要なのが改稿のお願いです。

・変わった名前の雲について説明を加えてもらう
・専門的すぎてわかりにくい部分を別の表現にしてもらう

といったお願いが代表的です。

また執筆の間に聞いた、A先生の雲への愛もうまく入れてもらうと、よい本になります。
あの山でこんな雲を見た、海ではいつもこういう時間を狙っている、この時はスマホですごくうまく撮れた、、、等々、それまでに聞いていた話を加えてもらいます。

こういう時に、思い出話や雑談で聞いていたことが役立ちます。

8)原稿整理

いただいた原稿は、整理をしてからページに組んでいきます。

誤字脱字の修正や、漢字をひらがなにしたり、漢数字(一、二、三)と算用数字(1、2、3)を整理したり、改行を加えたり、「、」を加えたりします。

また適度に、わかりにくい部分を書き直したり、表現を変更する場合もあります。
適度にというのが難しいところで、A先生が文章表現にこだわりのある方でしたら、その表現を尊重しますし、「僕の文章わかりにくいから、どんどん直して」というような方でしたら、たくさん手を加えます。

9)さまざまな依頼

イラストやデザインなどの依頼も必要です。

この本で、イラストで説明するとよいのは、
・積乱雲がどんな仕組みで発生するのか?
・この雲が現れるのは、天気図がこんなパターンの時!
・夕方にこの雲を撮る時は、太陽に対してこういう角度で撮るとよい
といったことでしょうか。

それぞれ、A先生とも相談し、資料を集めてイラストレーターさんへ依頼していきます。

デザイナーさんには、この本の狙いをよく説明し、ページのレイアウトを考えてもらいます。
文字の分量が増えるケース、イラストが入るケースと入らないケース、写真が縦に長いケース・横に長いケース、などなど細かい部分も相談していくことになります。

10)見出しやキャプションをつける

文芸作品であれば、タイトルや見出しも含めて作家が考えるかもしれませんが、実用書やガイドブック、雑誌等多くの印刷物では、見出しを編集者がつけています。

あるいは、著者やライターさんがつけた見出しをそのまま採用したり、手を加えたりします。
章ごとの見出し、項目の見出し、項目の中の小見出し、図版の見出し、コラムの見出しなど、たくさんの見出しが必要となります。

写真やイラストには、それぞれキャプションをつけていきます。

見出しのつけ方については、下記の記事を参考にしてみてください。

11)素材の整理と組版の依頼

原稿、写真、イラストなどを、いろいろな人から受け取り、整理をして、ページを組む人に渡すのも編集者の重要な仕事です。

画像の数が500点といった場合に、ファイル名の整理に失敗すると大変なことになります。

また、キャプションが多い場合なども気を使います。
本文はワードで整理して、キャプションはエクセルで写真の番号との一覧表にして渡す場合もあります。
さまざまな要素を整理してお渡しし、組版を依頼します。

組版は、専門の組版会社、デザイナーさんの事務所、印刷所などに頼む場合が多いです。

12)ゲラの作業

原稿、写真、イラスト、見出し、キャプションなどがページに組み上がったものがゲラで、最初にupしたものを初校といいます。

ゲラの作業が、一番わかりやすい編集者的な仕事といえます。
下記のようなことをしていきます。

12a:引き合わせ

組版を担当する人に渡した素材が、間違えずに入っているかを確認します。

写真やキャプションが間違って入っていたり、文章が間違ってコピペされていたりしないか確認し、修正がある場合はその指示を書き入れます。

12b:読んだ上で、改稿依頼や見出し変更などを検討する

ページに組み上がってみると、
「ページに文章が収まらなかったので、改行を減らそう」
「やっぱりここはA先生にもう少し書いてもらおう」
「この項目の見出しは、もっと強くしよう」
、、、といった部分が出てきます。

こういった箇所には直しを入れたり、フセンを付けて改稿依頼をまとめたりしていきます。

A先生にゲラを見てもらう時は、ここまでの作業をして、コピーを取って渡すほうがよいです。

12c:著者の確認と改稿

ゲラをA先生に読んでもらうと、間違いや執筆段階では確認を後回しにしていた部分が発覚したりします。
また、編集者が手を加えた部分やキャプションが不適切な場合もあります。
そういった問題がないか確認してもらい、改稿もしてもらいます。

12d:校閲の手配

文章の間違いを見つけるのが校閲です。

大きな出版社であれば、社内に校閲の部署があり、社員や外注者も含めてゲラを確認しています。
小さなところであれば、社外の協力者に依頼したり、編集者が自力でやったりしています(担当以外の編集者が読むという場合もあります)。

12e:社内や関係者への手配

ゲラは、その本がどんなものかを知らせるツールでもあります。
出版社であれば、上司や営業担当者、販促担当者などに見てもらいます。

社内から、さまざまな要望が寄せられることも多いです。
「この雲の写真、全然よくないから扱い小さくしろ」(え、A先生はこの雲を一番推してるのに!)
「もっと売れる要素入れるほうがいいな。カメラ女子の感想とか入れられるだろ」(今からそんなのどこに入れる!?)
A先生にも何度も改稿をお願いして出来上がったゲラに、端からびっしり直しを入れてくる人も。。。

指摘は正しいことも多いのですが、対応は大変です。

12f:直しをまとめる

著者の直し、校閲の指摘、社内の指摘、編集者自身の直し等々を整理します。

校閲や社内の指摘の中には、著者に確認しないと直せないものもあります。

いろいろな関係者に確認の連絡をとったり、元の原稿を読み直したり、変更することなった写真を整理したり、という作業が続きます。

12g:組版担当者へ渡す

ここまでのゲラの作業は、プリントに赤い文字で書き入れる場合が多いです。
PDFで見る場合もありますが、直しが込み入ったものになるほど、プリントで扱うほうが便利で速いからです。

組版担当者に渡す際は、直しを書き入れたゲラを渡すのが一番よいのですが、スキャンしたPDFを送ることも増えています。

13)タイトル、部数の決定

本のタイトル=書名は、企画が立ち上がってから編集作業が続く間は「仮タイトル」の形で進行し、カバーデザインを発注する段階で正式に決めることが多いです。

なぜそうなるのかというと、企画書の段階とゲラが出来た最終段階では、当然いろいろな違いがあるからです。
予想以上にきれいな写真を揃えられた、文章がものすごく面白い、社員の小学生の子供に見せてみたらすごく反応がよい、、、
そういった、いろいろなことを考えた上でタイトルが決まっていきます。

もちろん、著者の意向も大きく影響します。
多くの出版社では、タイトルと部数の決定をする会議があり、書店の反応なども加味して決断がなされます。

編集者は、この決定の場に向けて、
・A先生、イラストレーター、デザイナー、印刷製本の経費、取材費などの経費をまとめる
・タイトルの案をたくさん考えて、これ! というものに絞り込む
・タイトルや部数について、A先生の意見や要望も聞いておく
・サブタイトル、オビの原稿などをまとめる
、、、といった作業を進めていきます。

14)カバー関連のデザイン発注

決定したタイトル、サブタイトル、オビの原稿などをデザイナーに渡して、カバーのデザインを依頼します。
デザイナーは、ページ組版をお願いしているところに頼む場合もあれば、別にする場合もあります。

依頼のやり方は、編集者それぞれだと思いますが、
・どういう読者層に向けてアピールするか?
・タイトルやサブタイトル、オビなどの原稿にどういう意味をこめているか?
・どんな素材を使って構成するか?
といったことを伝え、デザイナーの意見を聞き、調整する必要があります。

内容を全部把握している編集者と、断片的な情報を聞き、それを読者にうまく伝えようとするデザイナーでは、当然いろいろな受け止め方・考え方が違います。
考えつくデザイン上のアイデアも、編集者が思いつくことと、プロであるデザイナーでは全然違います。
だからこそ、デザイナーさんにお願いする意味があるのです。

依頼の際には、できるだけ意見を交わして行き違いを少なくすることが重要です。
・きれいな雲の写真がたくさんある場合に、1枚を使うのか、たくさん使うのか?
・まじめな学術書的な感じ? インパクトが強いもの? 万人受けするほんわかした感じ? カワイイ感じ?
そんな方向性の確認です。
結果として、読者にうまく届けばよいのですが、よいデザインを完成させるためには、この段階でのすり合わせが重要です。

雲の写真のような、ちょうどよいビジュアル素材がない場合は、内容とは別のイラストや写真を使うということもあります。
文芸作品が代表的です。
私は文芸は全く経験がないですが、出版社がどういうふうに作家と作品の世界を世間に打ち出したいのか? それをデザイナーに伝えることが大切になるはずです。

※デザイナーへの依頼のときには、本のサイズ、背幅も重要です。
下記の記事を参考にしてみてください。

15)カバーやオビの確認

デザイナーに依頼した、カバーやオビのデザインが送られてきます。
今は、PDFやJPEGの画像などで送られてくることが多いです。

これもまた、A先生や社内の各部署、上司などに見せてOKをとります。

すんなりOKとなればよいのですが、

「もっとタイトルを目立たせて」
「雰囲気がなんか違うな」
「写真変えたほうがいいんじゃないのか?」とか
「オビの色を変えて」
とかいろいろな意見が出ることは多いです。

どの意見を取り入れて、どの意見は却下するか?
とり入れた意見は、どうデザイナーに伝えると、うまくいくのか?
そういうことを考えながら、デザイナーとやりとりをして、完成形へと持っていきます。

16)ゲラの最終確認

初校の修正作業が終わったゲラを再校といいます。
再校ゲラは、修正した箇所が正しく処理されているかを確認します。
たくさん直しがあった場合は、全くミスなく戻ってくることはないので、見落としのないようによく確認することが大切です。

再校ゲラもまたA先生に見てもらいます。
進め方にもよりますが、校閲さんにもう一度見てもらう場合もあります(再校だけを見てもらう場合など含めて、ケースバイケースです)。
案件ごとに違いますが、この段階でA先生の書き直しがあったり、写真を差し替えたり、イラストの間違いに気づいて描き直してもらったり、見出しを変更したり、さまざまな作業が発生します。

それぞれを直し終えて、修正作業は終了となります。

初校、再校の後に、三校、念校と出していく場合もあります。

17)仕様の最終決定

本を印刷製本するためには、印刷所に準備をしてもらう必要があります。

・カバー、オビに使う紙
・PP加工(印刷のあとにフィルムを貼り付ける)の有無
・本文部分のカラーのページ数、白黒のページ数
・それぞれのページがどういう順番で出てくるかをまとめた台割表
・本文の紙
・部数
・製本の方法(ハードカバー、ソフトカバー)

こういったことを、決定して印刷所に伝えます。

本に使われる紙は、本当にいろいろな種類があり、デザイナーと相談しながら決めていくことが多いです。

困るのは、その選び方で費用が大きく異なることです。
数千部の本の場合に、カバーの紙の選び方や印刷、加工の違いで数万円くらいはすぐに変わってしまうので、どんな紙が高いのか、安く済ませるにはどういう方法がよいか、を知っておくことは重要です。

ほかにも、表紙、見返し、別丁扉の紙と印刷や加工、ハードカバーの場合は花布、スピンなどの決定も必要です。

18)印刷所にデータを渡す

ゲラやカバーやオビの修正作業が終わったら、印刷所にデータを渡します。
出版・印刷業界で標準となっているのは、おおよそ下記の3種類です。

・Adobeのインデザイン
・Adobeのイラストレーター
・PDF(上記のAdobeのソフトからPDF出力したファイル)

今は、PDFを印刷所のサーバーにUPして完了、という形も増えていますが、カバーやオビも含む全ての要素のプリントアウトを出力見本として渡すと、印刷所の担当者もオペレーターの人もどういった内容かすぐわかるので安心です。

19)色校正と白焼き校正

印刷所から確認用に出てくるのが、色校正(色校)と白焼き校正(白焼き)です。

19a:色校正の2種類

カバーやオビなどのカラー印刷をする部分と、本文のカラーページを確認するものです。
実際に印刷する紙を使った校正を「本紙校正」、校正の専用の紙にインクジェットプリントしたのが「簡易校正」です。

本紙校正のほうが、費用が高いですが、より正確に色を確認できます。
簡易校正は費用が抑えられますが、正確な色の判断はできないことになっています。
ただ、簡易校正でも「ここはちょっとヤバいかも」という判断はできます。

19b:白焼き校正

20年くらい前の印刷の工程では、製版の段階でフィルムを作っていました。
そのフィルムを青焼きという方法でプリントし、確認していたので、最終確認は「青焼き」と呼ばれました。
今は、白い紙にデータがプリントされて出てくるので「白焼き」と呼ばれます。

19c:色校正と白焼き校正の確認

色校正はデザイナーに見てもらい、問題がないか確認します。写真の刷り具合について、デザイナーからの指示が入る場合も多いです。
本文部分は、ページの順番がまちがっていないかをよく確認します。

ページ番号が正しく入っているか?
章ごとの「柱」がまちがえずに入っているか?
目次は正しいか?

といった確認が代表的です。
この段階で最後に読んで、修正を入れる場合もあります。

案件ごとに違いますが、作家が写真に非常にこだわりがある、といった場合以外は、色校正や白焼きを作家に見せることは少ないと思います。
さまざまな修正はゲラの段階で終了しているべきで、この段階で、たくさんの直しを入れるのは危険だからです。

20)校了

色校正の段階で、デザイナーにデータを直してもらったり、白焼きに著者からの最終の修正の直しを転記したり、1ページまるごとの差し替えがあったり、、、
進行の具合にもよりますが、最後の最後までドタバタということは、出来るだけ避けたいですが実際はあります。

これらを全部まとめて、色校正と白焼きに書き入れて、見落としのないようにフセンを貼り付けて、渡し直すファイルを整理して、これらを印刷所に戻すと校正の終了となります。これを校了といいます。

色校正、白焼きに、直しがない場合は「校了」、直しがあるけどあとはお任せしますの場合は「責了」と書きいれて、渡します。
これで、本を作るという点では編集者の仕事はようやく一区切りです。

21)告知や販売準備など

本を作る作業と同時に、販売に関する仕事もあります。

出版社であれば、書店向けのチラシを作ったりします。
SNSでの告知、Amazonなどの販売ページに使うための紹介文の作成、販促用の画像の用意など、案件ごとにさまざまです。

22)進行管理

ここまで書いてきたような作業の段取りをうまくつけることも、編集者の仕事としては重要です。

デザイナーにいつ発注するか? そのためには、いつタイトルを決める必要があるか?
そのためには、A先生の原稿をここまでにはもらわないと、、、

こういったやりくりと同時に、予算をどう配分するかも考えます。

23)完成と関係者へのお届け

ついに本が完成しました! 製本所からクラフト紙でくるまれた本が届きます。
開封して、無事に出来上がっていることを確かめます。

できるだけ早く、A先生にお渡しして、この感激を分かち合いたいものです。
最後まで修正作業に粘り強くつきあってくれたデザイナーさんにも、送付したり持参します。
イラストレーターさんや、校閲さん、写真を提供してくれた方などにもお届けしたり送ったりします。

24)契約や支払い

出版は古い業界なので、支払いなどの条件が、あいまいに進むことが珍しくありません。
案件が進んでいかないと、どんなものになるかわからない、という事情もあります。

A先生への執筆料のお支払いも、最初だけの「買取り」か、増刷の際に支払いが発生する「印税」か、また印税率をどう設定するか、最後の最後に決まるようなケースもあります。
部数や価格の決定によっても、予算の幅が変わってくるので、デザイナーなどの協力者への支払い額も最後まで確定できないことが珍しくありません。

結果的に、完成した本をお届けしながら執筆者の方に、契約の条件を最終OKしていただいたりもします。
同様に、デザイナーさんにも本を渡したうえで「今回修正がすごく多かったので、少しだけ上乗せしてxx万円でお願いします」と伝えたりします。

契約書を結んだり、請求書の社内処理をして、本の制作は一応完了です。

25)そしてその後、、、

本の制作が完了して終わりとならないのが、編集者の仕事です。

A先生の講演会の会場で本を販売したり、デザイナーさんの事務所のお花見に参加したり、いろんなことがあります。

一冊の本が出来上がるまでには、非常に濃密なやりとりを繰り返す場合が多いので、作家さん、フォトグラファーさん、イラストレーターさん、校閲さん、そして印刷所の担当の方とも、深いつながりが出来ます。

こういう関係性や、仕事の経験が編集者の財産となっていきます。

hosokawakobo
細川生朗 Hosokawa Seiro
1967年生まれ。1991年に情報センター出版局に入社。『水原勇気0勝3敗11S』『いちど尾行をしてみたかった』『笑う出産』などのヒット作を編集。1994年に『きょうからの無職生活マニュアル』、1998年に『旅の指さし会話帳①タイ』を企画・編集。いずれも累計100万部以上のシリーズとなる。2001年に情報センター出版局を退職。その後、フリーの編集者として、実用書を中心にした単行本の企画・編集、自費出版の写真集や記録集の編集、社史の編纂などを手がけつつ、指さし会話帳シリーズの編集も続けている。