印刷物の見出しの付け方をまとめました。会報、社内報、文集、書籍等…簡単に付けるためのノウハウも紹介します

文章に見出しを付けるのって面倒ですよね!
付けるべきとは思うけれど、よい言葉が浮かばない…そんな方も多いと思います。
この記事では見出しのバリエーション倍増法、見出しを入れる頻度などをまとめてみました。
ご参考になれば幸いです。

この記事の目次

見出しの役割とは?

印刷物についている見出し。
普段、見出しの存在を強く意識して文章を読む方はいないと思います。
ですが、本や雑誌にはたいてい、細かく丁寧に見出しがつけられています。

付いていることには理由があります。印刷物の中で、見出しが担う役割があるのです。

見出しの役割を書き出してみると、

1)書いてある内容の目安となる
2)読みたい内容を探す目印となる

という点が基本となります。

さらに、下記のような点も考えると、よい見出しになります。

3)読者が読みつづけるためのガイド役となる
4)その文章をどう読んでもらうかの方向づけとなる

この文章では、そういった見出しの持つ役割も考えつつ、見出しの上手な付け方をまとめていきます。

見出しを付ける基本は「内容のまとめ」

見出しの役割1)書いてある内容の目安となる

見出しは文章を読んでいく上で、「こんな内容が書いてありますよ」と示す意味があります。
文章の概要であり、抜粋です。

見出しがあることで、読者は概要を把握して、「こんな内容があるのだな」と想定しながら読み続けていきます。

見出しの役割2)読みたい内容を探す目印となる

見出しは、必要のないところは読み飛ばし、読みたい情報を探すことにも使われます。

この読み飛ばしの際に読者は、Webでいえばスクロール、冊子や本であればパラパラめくって、自分が読みたい内容を見つけていきます。
これも、見出しの重要な役割となります。

役割1、2を果たすためには、見出しが文章を要約していることが必要です。

ブログを自分で書く場合であれば、見出しを書きながら文章を書いていくと思います。
ですが、誰かに書いてもらった原稿に見出しを付ける際には、その原稿を読んで内容を把握し、見出しをつけていく必要があります。

すごく当たり前のことですが、見出しを付けるにはまず原稿を読まなくてはなりません。
原稿の内容を理解して、何を要約するべきか考えること、この作業が必要です。

読者が読みやすいように、導く見出し

見出しの役割3)読者が読みつづけるためのガイド役となる

原稿を理解して見出しを付けようとすると、「この文章は、ここが大事なのに伝わりにくいな」という箇所があるはずです。
そういった箇所を把握して、適切な見出しを付けると、その見出しによって内容が理解されやすくなっていきます。

こういう見出しを付けるためには、原稿をよく読む必要があります。

理解しにくい原稿であればあるほど、編集する人の作業によって、後から読む人が余計な努力をせずに、スイスイ読むことができるようになりますし、そういう編集作業が理想的です。山道や未開地のガイドのような作業をするわけです。

この記事を読んでいる方が、何かの原稿を編集する立場にいるとしたら、ぜひ、そういうガイド役を果たしましょう。
自分が歩いた後に、道標(みちしるべ)を残して、後から来る人の目印とするのです。

読み手へ意図を持って内容を伝える

見出しの役割4)その文章をどう読んでもらうかの方向づけとなる

たとえば、求人用の冊子に載せるために依頼した原稿に、ネガティブだけれど面白い内容があった、とします。

そのまま見出しを付ければ、

*変わった人が多い会社

となる原稿に、

*常識を打ち破る人材の宝庫

と見出しをつけると、印象がだいぶ変わります。
読者は、こういった見出しによる方向づけに大きく影響を受けます。

特に依頼原稿の場合に、依頼した意図を完全に把握して100点満点の原稿が来るようなことはまずありません。
逆に、意図からそれているけれど、こちらが予想しなかったような面白い話が含まれている場合もあります。
いろいろな人の原稿を集める意義はそこにあり、全部が依頼する側の想定通りだったら面白いものにはならないのです。

意図からややそれた原稿も、見出しをうまく付けていくと、編集方針を反映しつつ面白いものとして読んでもらうことができます。

Webと印刷物での見られ方の違い

Webのページの場合、上から下にスクロールしながら読むのが基本なので、次の見出しを常に見ながら読んでいきます。

○ 見出しを読んで文章を読む。
○ また見出しが出てきて、見出しを読んで文章を読む。

この繰り返しです。

一方印刷物の場合は、Webよりも広い範囲が目に入ります。
見出しそのものは、最初にそのページを開いたときに、なんとなく目に入り、その後注意して読まれることは少ないです。
もちろん、読むといえば読むのですが、Webよりも読み飛ばす人が多いと思います。

逆に、印刷物の場合に、読みたいものを探す目印の意味合いは強くなります。

Webと印刷物での、引っ張り方の違い

この記事のように、Web上で一般的な文章を書く場合に要求されるのは、平易にわかりやすいことだろうと思います。
あんまり凝ったものにすると、こちらの意図が伝わる前にページから離脱される可能性が高いからです。

フラっとページに入ってきてくれた人が読みやすく感じる、そのくらいがよいということです。

一方、印刷物は人の手に渡ったところで、完結しているところがあります。
コンテンツ自体は、すでに人の手に渡っている。
読者が読んでも、読まなくても、手に渡ったという事実は変わりません。
大事なのは、そのコンテンツをいかに読んでもらうか? ということです。

そうすると見出しも、もっとグイグイと読者を引っ張るほうがよいのです。

この記事の前のほうで、下記の見出しを入れました。

*見出しを付ける基本は「内容のまとめ」

これを編集ノウハウの本に載せるならば、たとえば下記のようにします。

*見出しを付ける基本中の基本! それは「内容のまとめ」

これ読まないと損だよ! この文章面白いよ!
そういうふうに、読者を引っ張ることが大事です。

見出しを入れる頻度は300〜500字に1つくらい

1000文字の原稿がある時に、どのくらい見出しを入れるのがよいでしょうか?

もちろん、メディアや内容にもよりますが、非常にざっくりとした目安としては、1000文字に2つ、3つくらい入れるとよいと思います。
300〜500字に1箇所くらいの頻度です。

今、読んでいただいているこの記事を使って、いくつかのサンプルを作ってみました。

1)A4サイズに5段組み、ワードの原稿1600〜1800字くらい

これだけの文章を読ませようとすると、途中に見出しが5個くらいあると読みやすそうです。

2)A4サイズに4段組み、ワードの原稿1200〜1400字くらい

こちらは見出しが4つ入りました。こちらもちょうどよい感じです。

もちろん、5段組み、4段組みといっても、媒体によって事情はさまざまですから、ケースバイケースでお考えください。
ただし、20年、30年前に比べて、たくさん見出しを入れておかないと、印刷物が読まれなくなっているのではないかと思います。

今お読みいただいているこの記事は、おおよそ300〜500字に1つの見出しが入っているのですが、そのくらいの頻度が、印刷物でも必要になってきているように思います。

3)四六判の書籍、40字×15行の見開き

こういった通常の組版の書籍は、見開き2ページに1つずつ見出しを入れることが一つの目安です。
このサンプルの場合、見開き2ページに2つ入るペースなので多い部類です。

見開き2ページに1つずつ入れることの意味は下記のようなものです。

a)本の中のどこを開いても、内容の目印が置かれているので、全体の流れがわかりやすい

b)その本を読み進めている読者がページをめくった時に、次の目印が見えることで読み進めるための道標となる

本のいろいろな箇所に、目印、道標を作ることは読みやすくする上で重要です。

もちろん、内容の切れ目が、そんなにちょうどよく来るわけでもないので、バラつきはあるはずです。
文章全体、あるいは本全体で、そのくらいを目安として考えてみてください。

・ この文章は見出しをあんまり入れられないけど、書いているのが今注目の人だから、みんな読むだろう。

・ この本は、1ページあたりの文字がかなり多いから、見開き2ページに2つずつ見出しを入れよう。

・ この部分は、読者は一気に読むだろうから見出しはあえて入れるのやめておこう。

・ 見出しは入れられないけれど、その分図版を入れよう。

、、、というように、ケースバイケースの対応をしていく際の、目安としてもらうとよいと思います。

見出しの作り方1)いろいろ要素をつけてひっくり返す

語彙やアイデアを豊富に持っていればよいのですが、みんながそんな能力に恵まれているわけでもありません。
私もそうです。
いつも、苦心して見出しを付けています。

ただし、経験は長いので、いろんなやり方を学んできました。
その方法を紹介してみたいと思います。

まずは、ほぼ全ての見出しで使える方法の紹介です。

1-1)名詞をまずは見つける

名詞だけでも見出しになります。見出しがないよりも数倍よいです。

○入学式
●卒業式
○ワクチン接種
●新人研修

(○と●は、このあとの記事を読みやすくするために付けたマークです。他の意味はありません)

1-2)説明をつける

名詞に説明をつけます。
それだけで、非常に見出しっぽくなります

○入学式
 ↓
○涙の入学式

●卒業式
 ↓
息子の卒業式

○ワクチン接種
 ↓
○世田谷区のワクチン接種

新人研修
 ↓
昨年度の新人研修

少し説明が加わるだけで、文章の内容が想像しやすくなることがわかります。

1-3)ひっくり返してみる

ただし2のような感じの見出しが続くと、どうしても単調な印象になります。
見出しは、次へ次へと読者を引っ張る役目もあるので、単調ではないほうがよいです。

このやり方として一番簡単なのは、要素をひっくり返すことです。

涙の入学式
 ↓
入学式での涙

「涙の入学式」をそのままひっくり返すと「入学式の涙」となりますが、
「入学式での涙」「入学式では涙」「入学式、涙」「入学式は涙」、、、
いろいろバリエーションが生まれます。

ひっくり返すことが目的ではなく、ひっくり返そうとして考えて、多くのバリエーションを生むことが重要です。

息子の卒業式
 ↓
卒業式の息子

世田谷区のワクチン接種
 ↓
ワクチン接種、世田谷では?

昨年度の新人研修
 ↓
新人研修・昨年度の場合

「ワクチン接種、世田谷では?」って、かなり無理矢理だな、と思うかもしれませんが、無理矢理やってみると発見があります。
そして、この先がまだあります。

1-4)もう一つ要素を入れる

3までの作業を実際にやってみると、もう少し何か加えられる! と思うはずです。

入学式での涙
 ↓
入学式の涙のいきさつ

卒業式の息子
 ↓
卒業式で緊張の息子

ワクチン接種、世田谷では?
 ↓
ワクチン接種の会場運営〜世田谷の場合

新人研修・昨年度の場合
 ↓
新人研修・昨年度の事件

加える言葉はなんでもよくて、
「卒業式の息子」→「卒業式での息子との約束」「○○中学の卒業式での息子」
「卒業式の息子とハンカチ」、、、

よいのが見つかるかわかりませんが、とにかく何かくっつけてみることが大事です。

1-5)さらにひっくり返す

ここまで来たら、さらに要素をひっくり返してみたりして順番を変えてみます。
これも、無理矢理やってみて、その中でよいものを見つけていきます。

入学式の涙のいきさつ
 ↓
「涙のいきさつ」があった入学式

卒業式で緊張の息子
 ↓
息子、緊張の卒業式

ワクチン接種の会場運営〜世田谷の場合
 ↓
世田谷区のワクチン接種と会場運営

新人研修・昨年度の事件
 ↓
昨年度の新人研修での事件

この5つのやり方で、もともと1つの見出しに、さまざまなバリエーションを持たせることができます。

見出しの作り方2)簡単にできるテクニック

ここからは、ケースバイケースです。

ときどきすごく上手くいきますが、全然だめな場合もあります。

2-1)カタカナを入れる

ドキドキ、ワクワク、ハラハラ、ギギギッ、ウオオオ、
ニュアンス、レア、ストーリー、、、、

なんでもよいので、カタカナの言葉を付けてみます。

入学式
 ↓
入学式のワクワク

卒業式
 ↓
卒業式メモリー

ワクチン接種
 ↓
ワクチン接種ストーリー

新人研修
 ↓
新人研修ギギギッ

2-2:びっくりマークを入れる

「!」びっくりマーク(エクスクラメーションマーク、感嘆符)。

これを付けるだけで、印象が変わる場合は多いです。

これも、うまくいく場合も、ダメな場合もあります。

入学式のワクワク
 ↓
入学式のワクワク!

息子の卒業式
 ↓
息子の卒業式!

ワクチン接種ストーリー
 ↓
ワクチン接種ストーリー!

新人研修・昨年度の事件
 ↓
新人研修・昨年度の事件!

2-3:時間を入れる

年月日や時間を入れるだけで、印象が変わることがあります。

これも、やはりダメな場合もありますが、よいのができることもあります。

入学式
 ↓
2022年の入学式

卒業式
 ↓
卒業式、3月5日

ワクチン接種
 ↓
2時半ワクチン接種

新人研修
 ↓
新人研修23時

見出しの作り方3)簡単にできるテクニックその2

さらにバリエーションを増やす方法です。

3-1:文章にする

見出しですが、あえて文章にします。

入学式
 ↓
入学式の日を迎えました

卒業式
 ↓
卒業式の息子にハラハラする

ワクチン接種
 ↓
世田谷区でワクチン接種してもらいました

新人研修
 ↓
新人研修で事件が起きた

3-2:名詞のみにする

いろいろなことは言わず、名詞のみに絞ります。
象徴的な言葉がうまく見つかると、印象的な見出しになります。

入学式
 ↓
大山記念講堂

卒業式
 ↓
卒業証書

ワクチン接種
 ↓
高熱

新人研修
 ↓
嵐山研修所

「新宿三丁目」「谷町四丁目」「ハイドパーク」「xxxベーカリー」「リアルト橋」「ソチ五輪」
象徴的な意味合いをもつ言葉の場合にはとくに印象的なものになります。

一方で、ある企業の「嵐山研修所」は、その企業以外の人には伝わりにくいです。
イタリア・ベネチアの「リアルト橋」も、知らない人が多いでしょう。
つまり、伝わる範囲や伝わり方が限定されます。

3-3:適度に手を抜くことも大事

ここまで紹介してきたように、一つの見出しを付けるにも、いろんな方法があります。

でも、全部を全力投球する必要もありません。
適度に力を抜き、大事なところだけ頑張る、というくらいでもよいのです。

たとえば、下記のように見出しが並んでいると、圧迫感があります。

*「涙のいきさつ」があった入学式!
*ハラハラの新入生歓迎会
*6月7日15時、球技大会決勝
*コロナ禍で意外にも!
*国分町2丁目セブンイレブン

下記は、これを軽くしたものです。

*「涙のいきさつ」があった入学式!
*ハラハラの新入生歓迎会
*球技大会決勝
*コロナ禍で起きたこと
*国分町のセブンイレブン

全部に力が入り、「読んで!! 読んで!!!」となっていると、読者も疲れてしまいます。

ある程度力を抜くほうが、うまく伝わるのです。

見出しがストーリーを作っていく

あるコンテンツの、見出しが並んでいるのが目次です。

本の場合、その本ごとに違いますが、章見出し、小見出し等が並んでいます。
Webであれば、H1、H2、H3、、、見出しが抜き出されて「目次」となっています。

この目次を読んだときに、

1)コンテンツ全体の流れがわかる

2)このコンテンツを読んでみたいと思う

という2つの要件を満たすことが見出しの理想です。
これを果たすためには、

1)コンテンツのそれぞれのパートについて、内容を反映した見出しをつけている

2)コンテンツの魅力をうまく表現している

この2つが必要です。

全体を通して、見出しだけ並べたときに一つの魅力的なストーリーになっている。
これが理想です。

すごくがんばって考えた見出しもあるし、力を抜いているものもある。
でも、それらを並べたときに、コンテンツ全体のことを表現できていて、なんだか魅力的というものになっていればよいのです。

見出しを作るために、費やす時間のこと

私が2021年に関わっている仕事のなかに、A5サイズ2ページで1件のお店を紹介するガイドブックの仕事があります。

8つ程度の見出しがあり、この見出しを付けるために費やす時間は、120分くらいだと思います。
最初にとりあえず付けて、その後検討してまた変更して、1つ15分という計算です。

作業する内容は、次のようなものです。

・ 内容を把握する。
・それを魅力的な言葉にまとめる。
・他の見出しとのバランスをとる。
・全体として、一つのストーリーを作る。

こういう作業をしようすると、1つの見出しを5分で作るのは難しいです。

ある程度のクオリティの見出しを付けて、読者に読んでもらおうとすると、そのくらいの手間と時間が必要になります。

見出しを付けるコツは、究極的には根気

200ページの書籍に、100個の見出しが入るとすると、15分×100個で1500分=25時間。

実際、このくらいの時間がかかります。
というか、本当はもっと多いと思います。

延々と見出しを考える作業は苦行のようなところもありますが、付け終えると、本全体の道筋が出来上がります。

それが、道標を残すことの意味で、読者はその道標を頼りに読んでくれるわけですから、この手間は必要なものなのです。

たくさんの見出しを丁寧に付けるためには、最終的には根気が重要となります。
この記事を読んだ皆さんもがんばってみてください。

「名詞を見つける」→「説明を加える」→「ひっくり返す」
まずは、この作業を騙されたと思ってやってみると、たくさんの発見があるはずです!

hosokawakobo
細川生朗 Hosokawa Seiro
1967年生まれ。1991年に情報センター出版局に入社。『水原勇気0勝3敗11S』『いちど尾行をしてみたかった』『笑う出産』などのヒット作を編集。1994年に『きょうからの無職生活マニュアル』、1998年に『旅の指さし会話帳①タイ』を企画・編集。いずれも累計100万部以上のシリーズとなる。2001年に情報センター出版局を退職。その後、フリーの編集者として、実用書を中心にした単行本の企画・編集、自費出版の写真集や記録集の編集、社史の編纂などを手がけつつ、指さし会話帳シリーズの編集も続けている。