『おいしい!はやい!圧力鍋おかず』いろんな裏方さんが本を作る

圧力鍋入門用に買った本

この本を入手したきっかけを思い出そうとしたのですが、今ひとつ定かではありません。

買った場所はおぼえています。家の近所にあった本屋さんでした。

誰かにもらったのか、何かで当たったのか?

ともかく圧力鍋が家にやってきて、せっかくだから使ってみようと思っていたときに、本屋さんで立ち読みして、一度に二品作るというページに惹かれて買ったのでした。

『おいしい! はやい! 圧力鍋おかず』食のスタジオ編・2004・成美堂出版

奥付を見るとこの本の初版は2004年ですが、カバーに表示されているのは2009年1月。つまり2009年の1月に重版があり、私が購入したのはこの頃のようです。

レシピ本の当たり

料理本(レシピ本)はいろいろ買います。

経験的に、ネットでいろいろと調べて作るよりも、本を買って作るほうがおいしい可能性が高い。

そして、何度も作りたいレシピに出会う可能性も、ネットよりも本のほうが高いと思います。

ただ、もちろん当たり外れはあり、1冊の本の中に、何度も作るメニューが3つあれば当たり。

5つあれば大当たりではないかと思います。

この本では、そういうメニューに5~6品出会えたので、私にとっては大当たりの本です。

開いて楽しいしレシピが優れている

本自体の作りは、ものすごく工夫されているという印象ではありません。

出来上がりまでの工程をある程度写真で紹介。出来上がりの写真はきれいなスタイリングで紹介。

それ自体は、料理本の通常の作りの範囲だと思います。

でもページを開いたときに何か楽しい感じがしますし、出来上がるものが美味しいです。

レシピは、すごく本格派というわけではなくて、「日本の食卓にちょうどよい味」を教えてくれている感じです。

私がよく作るこの本のレシピの一つは、ポークビーンズですが、トマトケチャップ、コンソメスープ、しょうゆも使うというレシピです。その道のプロがいろいろ考えた末に、この辺が調度よいだろうと考えてくれた。そういう印象を持つレシピです。

ポトフ、鶏スープ、中華風おこわなども、何度も作りました。今となっては、本を開くこともなく作っています。

編者は「食のスタジオ」

この本の奥付を見ても「著者」は書いてありません。かわりに「食のスタジオ編」と書いてあります。

これがどういうことかというと、食のスタジオという会社が編集を請け負っているのです。こういう会社を編集プロダクションと言います。

本が出版される時の制作スタイルはさまざまです。

1)著者から出版社の編集者が原稿をいただいて作る本

2)出版社の編集者がライター、カメラマン、イラストレーター、デザイナーなどに手配して作る本

3)出版社が2の作業を編集プロダクションに丸投げして作る本

本当は、この1~3の間にいろいろな作り方がありますが、あえて大雑把にまとめてみました。

この本の場合は、おそらく3のような作り方で、出版社が編集プロダクション「食のスタジオ」に依頼し、作られたのではないかと思います。

奥付を見るとこんな風に書いてあります。

撮影:木村拓

デザイン:羽野田朋子

編集制作・構成:吉岡久美子、長谷川美喜(食のスタジオ)

レシピ製作・スタイリング・調理:牛尾理恵(食のスタジオ)

調理:田中みさと、池田桂子、栗田美香

イラスト:石田純子

「食のスタジオ」には、編集や構成をする人もいるのでしょう。そして、レシピやスタイリングをする方もいるのでしょう。そういう会社に依頼すれば、出版社としては効率よく本を作ることができます。

注目されにくい裏方さん

この本のレシピ製作にお名前のある牛尾理恵さんは、その後たくさんのレシピ本を作っています。

そのことは、この記事を書く際に調べて知りました。もともと、すごく美味しいレシピだなと思っていたので、納得の思いでした。

同時に、編集制作や撮影などで関わった方も含めて、よい仕事をされているので、何か心に残る本になっているのだろうと思います。amazonのレビューを見てみると230件くらいになっています。私の経験からすると、相当に多い数字です。いろんな人の手に渡り、いろんな方が感想を書きたくなる本なのでしょう。

強烈な著者がいれば、そういう数多くの感想も生まれやすいですが、圧力鍋のレシピを紹介する本でamazonレビューがこんなにあるというのは、すごいことです。

実用書は、文芸書に比べて評価される場も少ないです。裏方さんの頑張りもなかなか評価されません。でも、注目されにくいですが、すばらしい仕事を成し遂げて、頑張っている方たちがいるのです。

今この記事を読まれた方それぞれに、ご自分の好きな本があるはずです。

その本を好きになったことには、ご自分では気づかないような理由が必ずあるはずで、そこには、裏方さんの頑張りが効いているのです。

hosokawakobo
細川生朗 Hosokawa Seiro
1967年生まれ。1991年に情報センター出版局に入社。『水原勇気0勝3敗11S』『いちど尾行をしてみたかった』『笑う出産』などのヒット作を編集。1994年に『きょうからの無職生活マニュアル』、1998年に『旅の指さし会話帳①タイ』を企画・編集。いずれも累計100万部以上のシリーズとなる。2001年に情報センター出版局を退職。その後、フリーの編集者として、実用書を中心にした単行本の企画・編集、自費出版の写真集や記録集の編集、社史の編纂などを手がけつつ、指さし会話帳シリーズの編集も続けている。