『植物の生態図鑑』図版手配の大変さを思う

工夫が凝縮された図鑑

子供の頃図鑑が大好きでした。
恐竜、昆虫、理科の実験、電気、動物とか、よく見ていました。

親となり、子供に買った図鑑の中で「これはすごい!」と思った本が『植物の生態図鑑』(学研)です。
同じシリーズで『昆虫の生態図鑑』もあり、こちらも同様にすごい。
いろいろな植物や昆虫の生態を写真やイラストで紹介して、そこに解説が加わるという作りです。

普通の図鑑はカブトムシとかがたくさん並んでいる。もちろんその図版を用意するだけで大変なことですが、作業としては揃えることが主眼となります。
でも、こっちは、生態の紹介ですから、どういう絵柄とレイアウトで説明したら理解しやすいかを考えないといけません。
その上で、小学校高学年から中学生くらいが興味を持つように、楽しいページにしないといけない。
これが本当に大変なわけです。

項目ごとに膨大な手間がかかっている

たとえば、熱帯雨林の様子を紹介するイラスト。これの準備も大変です。

どんな樹があるのか、それぞれどんな大きさなのか? 葉が、どんな高さでつくのか、葉の形はどうか? それらをどう組み合わせるか? 解説に何を入れるか?

この絵を描く人が熱帯雨林に住んでいたことがあって、樹のことをなんでも知っているならばよいのですが、まずそれはあり得ないので、描くもの全ての資料が必要となります。

この1ページのイラストを描くのに、少なくとも数十の資料は用意しているはずです。

わかりやすさと楽しさの両立にも手間がかかる

昆虫のほうでは、鳥が驚いているイラストがのっています。
目玉模様のいろいろな幼虫と、それを鳥がどうとらえているのか、実験した写真も含めてまとめてあります。

実験の写真だとわかりにくいことが、イラストになるとよくわかります。
でも、そういうわかりやすいイラストを掲載するためには、専門家の意見も聞きながら、どんな絵柄にするかを考えて、イラストを描く人に依頼する人が必要です。
その時に資料をわかりやすく揃えて渡すのも大切です。

そういった作業を粘り強く続けて、一つひとつのページに、それぞれ別々のレイアウトを説明パターンを考えて、必要な写真やイラストを揃えていく、そういう形でこの本の編集の方は関わったはずです。

図鑑を1冊作るには監修者がいたり、イラストを描く人もいますが、それをまとめる編集作業は本当に大変なはず。

でも、こうやって出来上がったページは、単に出版社や監修者、イラストレーター、編集者のものということを超えて、日本や世界にとっての財産のようなところがあります。
そういうページを作れるように励みたいと思います。

hosokawakobo
細川生朗 Hosokawa Seiro
1967年生まれ。1991年に情報センター出版局に入社。『水原勇気0勝3敗11S』『いちど尾行をしてみたかった』『笑う出産』などのヒット作を編集。1994年に『きょうからの無職生活マニュアル』、1998年に『旅の指さし会話帳①タイ』を企画・編集。いずれも累計100万部以上のシリーズとなる。2001年に情報センター出版局を退職。その後、フリーの編集者として、実用書を中心にした単行本の企画・編集、自費出版の写真集や記録集の編集、社史の編纂などを手がけつつ、指さし会話帳シリーズの編集も続けている。