『Making Books』(自分で製本するガイドブック)手作り感のある演出

ロンドンでたまたま出会った本

2019年ロンドンへ行ったときに、ショーディッチ(Shoreditch)という街を散歩しました。
事前に調べてあった、BookArtBookShopという店にも入りました。
自費出版の変わった本をたくさん置いてあるところで面白かったのですが、買いたいと思う本はなく、、、困ってしまいました。

日本でも経験がありますが、変わった試みをやっているお店に入って、しばらく中を見せてもらったら、何か一つくらい買って帰りたいもの。
でもちょうどいい物がない。あんまり欲しいものがない。。。
それで何かないかと探していたら、見つかったのがこの本です。

『Making Books』(発行PAVILION)。

ロンドンにはブックアートセンターというところがあり、そのテキストのようです。
副題が”A guide to creating hand-crafted books by the London Centre for Book Arts”。
「ロンドンブックアートセンターによる、ハンドメイド製本の手引き」といった感じでしょうか。
2017年の刊行となっています。

変わった本ばかりを扱う本屋さんで、本の作り方の本を買う、その自分も本を作っている。
この巡り合わせが絶妙でした。

そして、その内容も素晴らしくよかったのです。
さまざまな製本の手順が、本当に丁寧に、わかりやすく解説されていて、どのページも美しくてしびれました。

手書きのイラストが効果的に使われている

本当によく出来た本だなあと、思っていたのですが、今回見直していたら、一つ気がつきました。
手書きのイラストがところどころに入っているのです。

写真できれいに解説されている本という印象が強かったのですが、何か温かい手作り感を以前から感じていました。
たぶん、その印象に、手書きのイラストが影響していたのだと思います。

本の世界もwebの世界も、きれいなデジタルデータでいくらでも作れる時代です。
無料のフォトストックなどが典型ですが、きれいな物はいくらでも手に入る。
そういう時代だからこそ、手書きのイラストや文字を使うことに意味があるように思っています。

世間一般と同じような表現手段を使うほうが、伝わりやすい場合もあるし、それでは目立たず埋没してしまう場合もあります。
どちらを取るとよいのかは、いつも考えます。

この本、『Making Books』は、デジタルデータで全部作れる時代に作られたわけですが、シンプルで美しいレイアウトの中に、手書きのテイストも入れている、その辺がのさじ加減、バランスがうまいなあ、と思いました。

その編集によって、本を手作りするときの楽しい感じが見事に表現されています。

本のことをよく知っていて、本を愛する人たちが作ったことが伝わってきます。

hosokawakobo
細川生朗 Hosokawa Seiro
1967年生まれ。1991年に情報センター出版局に入社。『水原勇気0勝3敗11S』『いちど尾行をしてみたかった』『笑う出産』などのヒット作を編集。1994年に『きょうからの無職生活マニュアル』、1998年に『旅の指さし会話帳①タイ』を企画・編集。いずれも累計100万部以上のシリーズとなる。2001年に情報センター出版局を退職。その後、フリーの編集者として、実用書を中心にした単行本の企画・編集、自費出版の写真集や記録集の編集、社史の編纂などを手がけつつ、指さし会話帳シリーズの編集も続けている。