『北京の小麦粉料理』好きな本と売れる本は一致したりしなかったりする

料理本は好きなジャンル

この原稿を最初に書いたのは、Facebook上でブックカバーチャレンジをして、7冊の本を紹介したときでした。
料理はよくしますし、料理本はよく書います。
料理の本をいつか作ってみたいという気持ちもあります。
それで料理本にしようと思ったのですが、困りました。

好きな本がたくさんあって、選べません。
候補となっただけで10冊くらいはあったのですが、いろいろ考えて、一番好きな本と紹介したのはこの本でした。

『北京の小麦粉料理』(ウー・ウェン/グラフ社)

本をたくさん出しているウー・ウェンさんですが、この本が最初のようです。
その次に書いている『単純がうれしい北京のおかず』もすごくよいです。

料理本が売れるための要素とは?

料理本が売れるための要素は何だろうと考えてみたのですが、

1)著者のファンがいる
2)手順がわかりやすい
3)出来上がる料理がおいしい
4)企画がよい

というようにいろいろな要因があるだろうと考えられました。
こういった要素を、この本『北京の小麦粉料理』がどう満たしているかを考えてみます。

この本が出た頃には、ウー・ウェンさんは今ほどには著名ではなかったので、1のファンがいて買ってくれるかはどうかは未知数だったはずです。

ただし、2の手順については、ものすごく丁寧に作ってあります。
餃子の皮、麺類など小さな写真がぎっしり並んでいます。
写真の形がところどころ、揃ってなかったりもします。きれいに揃うことよりも、説明重視。この辺も私は大好きです。

3の部分ですが、出来上がる料理はものすごくうまいです。

4の企画という面では、類書がないという面ではよかったのでしょうが、流行りとかそういうものではないです。

そういう意味では、この本は、無名に近い著者が、編集者と一緒にものすごい手間をかけて、手順を細かく紹介し、その美味しさも含めて評価された本と言えると思います。
この後、絶え間なく本を出しつづける、最初となった本。その後に結びついた本と言えると思いです。

もう一つ大好きな料理本『野口真紀さんのおうちおすし』

もう一つ好きな本として、紹介したかったのが、『野口真紀さんのおうちおすし』(主婦と生活社)です。

この本は図書館で二度借りて、やっぱり手元に置いておきたいと思い買いました。
著者は、雑誌等でも活躍している方で著作も多いです。

この本も手順も(『北京~』ほどではないですが)くわしく説明しているし、出来上がる料理もおいしいです。

企画性という点でも『北京~』とそんなに変わらないのでは?と思います。
ただ、成功したという点では、おそらく『北京~』のほうなのです。

おすしというのは、基本的には、巻きずし、握りずし、押し寿司、ちらし寿司。
手順はそれぞれ一回説明すればあとは同じですし、ちらし寿司のバリエーションを説明しても、餃子の中身のバリエーションに比べるとインパクトは弱いかもしれません。
日本で生活していれば、いろんな寿司がいつも目に入っているからです。

好きな本とビジネスとして成功する本

そういう意味で売れにくい本かなあとは思いますが、なぜか好きでページをめくると幸せな気持ちになります。
結局のところ、好きな本と、ビジネスとして成功する本は違います。
重なる場合もあるけれど、重ならない場合も多いです。
料理本を紹介しようと思ったら、そこに行き着いてしまいました。

hosokawakobo
細川生朗 Hosokawa Seiro
1967年生まれ。1991年に情報センター出版局に入社。『水原勇気0勝3敗11S』『いちど尾行をしてみたかった』『笑う出産』などのヒット作を編集。1994年に『きょうからの無職生活マニュアル』、1998年に『旅の指さし会話帳①タイ』を企画・編集。いずれも累計100万部以上のシリーズとなる。2001年に情報センター出版局を退職。その後、フリーの編集者として、実用書を中心にした単行本の企画・編集、自費出版の写真集や記録集の編集、社史の編纂などを手がけつつ、指さし会話帳シリーズの編集も続けている。